歯並びが悪くなる理由
歯並びが悪くなる原因は、先天的なものは約2割で、残りの約8割は後天的原因と言われています。後天的原因の中でも特に影響が大きい要素は「悪習慣を含む生活習慣」です。
歯並びが悪くなる癖
口呼吸
正しい舌の位置は上顎に密着した状態ですが、口呼吸の場合は舌が下がっています。すると気道が狭くなり、鼻呼吸だけでは酸素が足りなくなるため、口が開いてしまうのです。その結果、舌・頬・唇のバランスが崩れて、上顎が狭くなり受け口になったり、顎の成長方向を変えて面長な顔立ちになったりします。舌、呼吸、姿勢の悪習慣は必ず連動しています。
異常嚥下癖(飲み込みの癖)
舌を前に突き出すといった癖があると、舌が前歯を上下に押し広げてしまい、開咬(口を閉じたときに上下の前歯の間にすき間がある状態)になりやすくなります。
よく噛まない
お口周りの筋肉がしっかり育たないため顎が発育せず、叢生(歯がでこぼこに重なって生えている状態)や面長な顔立ちになりやすくなります。
指しゃぶり
指しゃぶりは、子どもの8割が3歳で自然にやめると言われていますが、長引くと歯並びに影響します。4〜5歳までにやめることができれば、歯並びが自然に治るケースが多いです。
下唇を噛む
下唇を噛むことが習慣になると、出っ歯になる恐れがあります。
頬杖をつく
頬杖が習慣になると、顎が左右にずれてしまう恐れがあります。
お口の健康を線路に例えると、たとえ本線から脱線していても、4〜5歳までに上記のような癖を改めれば、自力で本線に戻れる可能性が高いです。つまり、歯科医院で矯正治療を受けずとも、正しい歯並びを手に入れることができるケースが多いのです。
もし4〜5歳を過ぎても、装置を使った治療と並行して、MFT(口腔筋機能療法)を実施すれば、歯並びを骨格から整える根本的な改善を目指せます。
体が正しく機能していれば、歯並びは自然と整うのです。
歯並びが悪いと起きる問題
歯並びが悪いと、知能・情緒・運動能力の形成に悪影響を及ぼす場合があります。
知能について
ネズミを使ったある実験によると、ネズミの歯を抜いて食べ物を咀嚼できない状態にすると、記憶に障害が生じて餌場にたどり着けなくなることが分かりました。また、このネズミを入れ歯で治療したところ、知能が元通り回復しました。このほか、口呼吸の場合、鼻呼吸よりも酸素を取り込める量が少なくなり、脳に酸素が届きにくくなることも分かっています。
情緒について
ネズミを使った実験で、軟食ばかり与えられ噛み合わせが不安定なネズミは、通常の習性とは逆に孤独を好むようになったり、嫌な状況に耐えられない傾向が現れたりすることが分かっています。また、噛み合わせが不安定だと自律神経失調症と関連のあるPTTという物質が多くなり、些細な出来事にも動揺しやすくなるとも言われています。
運動能力について
全ての歯が接触して噛み合わせが安定していないと、運動能力を十分に発揮できない恐れがあります。スポーツ選手が試合の際にマウスピースで噛み合わせを安定させることは、一般的にもよく知られています。
歯並びのチェックポイント
極端に歯並びが悪くないお子さまも、将来的に歯並びが崩れる可能性が高いケースや、機能面で治療を必要としているケースもあります。次のような点をチェックしてみてください。
3〜6歳(乳歯列が完成)
6〜7歳
不正咬合の種類
叢生(歯がでこぼこに重なって生えている状態)
上顎前突(出っ歯)
下顎前突(受け口)
交差咬合(顎のずれ)
開咬(口を閉じたときに上下の前歯の間にすき間がある状態)
過蓋咬合
唇や舌の癖
次のような癖があると、唇や舌で歯を押して動かしてしまい、歯並びを悪化させてしまうケースが多いです。
- 普段からお口をポカーンと開け、上下の歯の間に舌が出ている(特に多く見られる癖です)
- 飲み込む時に舌を突き出して歯を押す
- サ行、タ行、ナ行、ラ行などの発音が舌たらず
- 唇を噛んだり、巻き込んだりしている
このような癖を放っておくと、矯正治療の期間が長引いたり、治療後も後戻りしやすくなったりします。
ご両親の不正咬合に関して
歯並びを悪化させる原因のうち、先天的原因は約2割と少ない割合です。しかし、歯並びが悪い親御さんの良くない習慣をお子さまが「模倣」することで、お子さまも同じように歯並びが悪くなるケースが非常に多いのです。中でも軽度の受け口は、口呼吸や舌の位置が低いといった習慣からくるものがほとんどです。
お子さまが自然と食べ物を摂取できるようになったり、言葉を覚えたりするのは、親御さんの動きを模倣しているからです。お子さまは、親御さんが想像する以上に、食べ方・飲み方といったお口周りのディティールをよく観察しています。このように、お子さまの歯並びには、親御さん自身の不正咬合が間接的に影響しうるのです。
抜けた乳歯、欠けた乳歯
お子さまのお口の中に、抜けた乳歯や欠けた乳歯はありませんか?「乳歯は抜けるから大丈夫」と油断するのは禁物です。欠損部と隣り合った歯は倒れやくなり、それをきっかけに全体的な噛み合わせが崩れる恐れがあるためです。
また、乳歯に大きなむし歯ができて歯の根が炎症を起こしている場合も、奥に控える永久歯の生える方向を変えてしまうことがあります。お子さまの乳歯に異常が見つかったら、歯科医院で診察を受けるよう心がけてください。